「おはヨーッ!」
「あ、星村さん!おはよう」
「おはよう~」
アリーはアニメショップで出会ったクラスメイトに声をかけた
眼鏡で三つ編みの雨川成海とそばかすにセミロングの髪型の雲井萌那である
二人とも大人しくてクラスでは目立たないような存在だがアリーにとっては初めてアニメが話せる友達である、派手とか派手じゃないとかの問題ではない
「ねー!アメリカではコミックしかなかったケド日本ではアニメやってたあれって~」
「あれね!作画も声優さんもめっちゃいいよ!」
などとキャッキャ話していると授業の時間、雨川と雲井の席は前後なのだがアリーの席は窓際の二人と正反対の扉側にあったので二人がいるところにアリーがいくのが当たり前になっていた
「じゃあまたネ!」
「星村さんいつの間にあいつらと仲良くなったの?」
隣の席の早川が話しかけてきた
「昨日でかけてたら会っちゃった!」
「星村さんってアッチ系なわけ……?」
「アッチ……?どっち……?」
「授業をはじめるぞ~~」
アリーは疑問に思ったまま先生が教室に入り授業が始まった
「星村さんさぁ~~あんなのと一緒にいるの?せっかくかわいいのにダッサー!」
「??」
お昼休み二人のところに行こうと思ってたら目の前に派手目な女子3人組が現れた
「キモオタじゃん笑」
「あんなやつらじゃなくてさーアタシらと遊ぼうよ!星村さんかわいいし一緒におしゃれして男の子とも遊ぼうよ」
「わ、私はナルミとモナといると楽しいヨ!?そうだ皆で遊ぼうヨきっと楽しいダヨ!」
「は?あんなキモオタ、アタシたちが一緒に居るだけでビョーキになるからつるむわけないじゃん、早川もなんか言ってやってよ」
隣でお昼ご飯を食べていて急に話をふっかけられた早川
「えっあー……俺もこいつらと遊んでたほうがいいと思う、だってオタクってマンガのキャラの男同士で恋愛?させてんでしょ?キモすぎ笑」
「そ、それはオタク皆ジャナイヨ!」
「なにそれキモすぎ……星村さんそんなの好きなやつらのほうがいいんだ……ふーん……いこ……ご飯食べよう」
「そうだね……キモいやつとご飯食べたくないもん」
派手目な女子3人組はそう言って去っていった、隣の早川は男友達と話していてこっちを見ることはなかった、雨川と雲井のほうを見たらうつむいて無言でお弁当を食べていた
聞こえてるよね……みんなひどいよ……好きなものが違うだけでこんなにサベツするの……?
と考えてたら雨川と雲井の近くでご飯を食べにいけず一人でご飯を食べてその日の授業を終えた
次の日から学校に言ったらクラスメイトに必要な会話以外することができなくなっていた、学校の備品がどうとか、掃除の仕方とかそういうのにもめんどくさそうな返しをされていた
雨川と雲井にも話しかけたり一緒に帰ろうと言ったがあの教室に用があるから、塾の日だからごめんねなど言われて断られていた
派手目な女子3人組はときどきこちらを見てニヤニヤしたり早川に話しかけに来たりはしていた
ある日早川に屋上に来てくれと言われて放課後屋上に行ったら早川が立っていた
「星村さんきてくれてありがとう」
「どういたしまして…?」
アリーは友達ができたのに話もできないので少々疲れていた、早川くんが声かけてきてくれたけど友達のことをキモいだのなんだの言ったのである、苦手にもなる
「実は俺……星村さんに一目惚れしちゃってさ……めっちゃ……かわいくて、転校生めんどくさいなと思ったけど教室に星村さん入ってきたとき、こう、ビビッ!てきて……その」
「??」
「俺と付き合ってくんないかな」
「??????」
「でさ、いまみんなにシカトされてるじゃん?俺あの3人と仲いいからきっと皆と話せるようになるんだと思うんだよね」
「……ナルミとモナとも話せるようになる?」
「あいつらのことはいいんじゃない?だってキモいオタクだよ?忘れちゃおうよ」
ここでアリーの堪忍袋の緒が切れる音がした
「(あなたにとって変な人でも私には大事なひとなの!!オタクだって関係ない!ベストフレンドだよ!?なんでそれだけで差別するの!!?おかしいよ!私は貴方みたいな人とっても嫌!!)」
「え、英語……」
「(あなた英語得意なんでしょ!?これくらいわかりなさい!!私帰る!!!!!!!!!)」
ぶちギレしながら帰った
そのつぎの日から無視はエスカレートした、登校したらイスがなかったりした、すぐ見つかったけどみんながワイワイ話してるなか一人ぽつんとしていた、雨川と雲井は二人だけの世界に戻って入って話しているようだった、さみしいな、アメリカのほうがよかったかな、アメリカの皆元気かななどしみじみ考えながらお昼ご飯を食べていた
そんな日がいくつか過ぎて帰ろうと下駄箱をあけたら手紙が入っていた
雨川からだった
星村さんへ
私たちの友達になったことから3人組に目をつけられて周りのクラスメイトにも無視されてることわかってるの、わかってるけどこんな卑怯な手紙だけでごめんなさい、
あの3人組はクラスのトップでボスみたいなものでみんな嫌われないように生きてる、、みたいな感じかな、
それでね?星村さん、早川くんのことフッたでしょ?3人組のリーダーの女の子は早川くんが好きだったからたぶん星村さんに逆恨みしてるんだと思う……私と萌那はオタクでキモいとかそういうので3人組にはシカトされてるの馴れてるけど他のみんなからは普通なんだ……それで学校では怖くて話せないしこれ以上星村さんが一人なのは悲しいし私達のせいでもあるから、わたしと萌那のLINEのIDを教えるね、塾に行ってるとか言ったけどあれは嘘です、ごめんなさい、放課後とか夜お話できたら嬉しいな……もちろん怒ってるとか嫌なら追加しなくてOKです、これくらいしか力になれなくてごめんね
雨川成海
ぼうっとしていた、おとまだちだ……とぽそっと呟いて涙が溢れた
涙で視界が滲みながらLINEIDを打ち込んで登録した
帰り道雨川成海と雲井萌那のLINEともだちになり、夜には3人で通話した、ごめんねから始まっておやすみで終わった、転校初日にアニメショップで出会ってから3ヶ月経って、心置きなく初めて話せたのである
学校で無理して会話しなくてもおとまだちとはLINEで話せるという居場所があるだけでアリーの心はとても軽くなっていた、早川は全くと言っていいほど声をかけてこないしかけたくないし席替えしたしほぼ縁はなくなった、3人組はたまに教科書をゴミ箱に突っ込むとかしてくるからどうかしようとしても証拠がないので陰湿でやり返したくても厄介だった
そんななか机のなかに見覚えのないメモが入っていた
星村アリーへ
放課後音楽室近くの女子トイレにこい
うっ………………わ~~~~~~行きたくな~~~~~~~~いと思ったのが最初である、日本語で呼び捨てだし、女子の字っぽいから早川ではなく3人組の誰かかなと思った音楽室は職員室の近くにはないから嫌がらせにはうってつけなのではと思い
おとまだちに連絡した
放課後音楽室の女子トイレの前に立つアリー、そこでやっぱり3人組の女子がやってきた
「星村さん来てくれたんだ~~まあ中入ろうよ、ね、仲良くトイレ~~」
「………………」
もう入った瞬間3人組の1人がアリーの足を上履きをはいたまま踏みつけてきた
「よくあんな怪しい手紙で来たよね笑、日本語読めてる???」
「決着をつけにきたの、shoesのまま足踏んづけるのヤメテ」
「決着だって~~なんのこと~~??」
「こういうこと?」
突然アリーに水をぶっかけてきた
「ーーーーーッッッ!!!」
「トイレいじめの定番だよねえ笑笑」
「いじめじゃないし~お遊びだもんアリーチャンのキモオタ部分を洗い流してあげたんだよ~~」
「水に濡れたからッテ、アリーは負けないヨ……」
「は?うるさいなあ早川くんとかいうイケメンフッといてキモオタがうっせぇんだよ!!お前そんな分際であーだこーだ言うな!アタシには偏差値低いけど不良校の頭はってる兄貴がいてさあ、だからまあクラスメイトはアタシにびびってんだけど笑、ボコってもいいしアリーチャンは~~顔がいいから色んな男のために働いてもらってもいいかもね~~キャハハ」
「クラスメイト……だから皆……アナタガこわかったんだ……」
「そう!だからアタシに言うこと聞かせたかったら金持ってこいよ……そうだな~~とりあえず五万……十万円かな?十万ドルでもいいよ?笑」
「アリーはそんなやつにお金払わナイ!皆聞こえましたカ!?2年2組星村アリーです!いま、音楽室の近くの女子トイレで水ビシャー!されてお金を払えって言われてます!!」
「は……?」
故障中とひとつだけ閉まっていたトイレの戸が開く
「こちら放送委員の協力者です!い、いままでの話は全部職員室校長室グラウンドまでこの集音マイクで放送させて頂きました!」
雨川成海の登場である
「ハァアア??!!!!」
慌て出す3人組、続いて
<ピンポンパンポン>[放送委員の雲井です、先程の放送はリアルタイムで音楽室の近くの女子トイレで起こったことで……ああっ先生!ブチッ]
「ど、どうしよ!!」
「ににににげようよ!!」
「キャーッ」
音楽室の近くにある軽音部と吹奏楽部がトイレの前を野次馬として埋め尽くしていた
(おいあの子ほんとにびしょ濡れだぞ!)(あの集音マイク学祭のときのやつ?)(女子トイレ呼び出すとか怖……)
「生活指導の蒲田だ!どけどけ……水ぶっかけた方もぶっかけられた方も集音マイクのやつもとりあえずまとめて生活指導室に来なさい!ほら道開けて……とりあえずタオル持ってきたから星村お前はジャージに着替えなさい」
お分かりだと思うが作戦はこうだ
3人組が入る前に雨川が集音マイクをもってトイレにこもる(アリーが故障中の紙を貼り付ける)放送委員の雲井が集音マイクを連携させて放送のタイミングを伺う(今日の担当の先輩には面白そうだからOKと許可をとった)
ジャージに着替えて生活指導室で1人づつあーだこーだ話した、もちろん3人組はアイツが悪い私は悪くないの押し付けあいの押し問答、しまいには泣き出す始末
アリーは女子トイレのことはもちろん転校してからのことを全部話した、泣きたくなかったが自分ってこんな状況だったのかと思うと辛さが整理されて涙が止まらなかった
大きかったのは雨川と雲井の存在である、1人ではここまで巻き込んでいじめを明かすのは難しかっただろう、2人はあの3人組のせいでクラスメイトがびびっていることなどを話してくれた
結果はというとリーダーの女の子が退学処分、他の二人は停学(だがのちに学校を辞めた)アリー、雨川、雲井は放送をつかったことを厳重注意くらいでお咎めなしだった
それからはクラス全体が徐々に和気あいあいとしていた、もちろんアリーに対するシカトがなくなった、雨川、雲井とも気軽に話せる仲になりクラスはそのまま三年生、卒業へとなっていった
雨川、雲井は四年制大学へ、アリーは短大へ行くことになったが3人とも地元に残った
時は流れ
「アリーちゃん二十歳の誕生日おめでとう!!!」
「じゃーん開けて開けてー」
「アリガット!!わー!DVDBOX!」
「アリーちゃんお酒の味はどうだい……?」
「ぽかぽかする~~キャハハww」
今日はアリーの誕生日、雨川、雲井は先に誕生日がきているので初めての3人での飲み会、アリーの家だが
アニメ見て、ケーキ食べて、お酒のんで、酔いがまわって、楽しくて
「は~~推しかわいいなあ」
「アリーのおとうとくんってちょっとこのキャラに似てるよね」
「そう?カケル~~!!ちょっときて!」
「うるさいなあ酔っぱらい!」
「カケルくんお久しぶり~!」
「どうも~」
「似てるかな~~」
「アリーは似てないと思う!」
「じゃあ呼ぶな!!」
「アリーはいまさいつよだから」
「そう?じゃちょっと待って」
「「「?」」」
「これ応募してみれば?」
「アイドルオーディション!??」
「アリー可愛いからいけるんじゃない!?」
「歌もうまいし!カラオケだと私たちと声量レベチだし」
「そっかー!応募してみるか!おとまだちたくさんできるカナ!?」
「アリーならできるよ!」
「アイドルのお友達とか出来ちゃうんじゃない!?」
「よーし!おとまだちいっぱいつくるゾー!!!」
《ハッハッハッハッハッ》
アリーがオーディションを思い出すのは一次合格通知が来てからのことである
【あとがき】
最初はこんな明るいアリーもいじめられててみたいなの書くので暗くしようとしたら痛快退治ものになりました。雨川、雲井とかオタクとスクールカーストの上のほうともめるのは考えてたんですがオタクにもパリピにも馴染めず平々凡々の子が友達になってくれてその子がやむを得ず引っ越すか死ぬかみたいなのも考えたんですけど死ぬのは辛すぎるし(あんま言いたくないけど経験者なので)引っ越しても今SNSがあるからなあとこんなんなりましたね、ケータイ放り投げるとかでもデータ引き継げばLINEできるし、
あ、アリーの一人称が私からアリーになってたのは日本で慣れるためにしてましたけどアイドルのアリーは……すいませんあんまかんがえてなかったです